アトピー性皮膚炎について

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アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の原因をザックリまとめますと、
1アレルギー体質
2乾燥肌体質(DrySkin)
3悪化因子(表皮に存在する細菌、ストレス・不眠・食べ物・腸内環境の悪化)になります。

1アレルギー体質

アレルギーの遺伝的原因があり、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などの合併症がみられることがあり、また非特異的IgE抗体、白血球の好酸球などが高値である体質です。正常な状態では、たとえばハチに刺され、皮膚表面にハチ毒が侵入した場合、それを認識する見張り役の細胞が、外敵侵入を周辺に伝え、そのハチ毒を排除するため応援を呼びます。ある細胞はハチ毒に対して、さす又(U字+柄の逮捕道具)で押さえつけたり、縄で捕まえようとし(抗体産生)、ある細胞は騒ぎ(炎症)を大きくして、ハチ毒周辺の皮膚を水浸しにし(浮腫)、かゆみを増して、ショベルカーでかき出す(手で掻く)ことによりハチ毒を含む皮膚表面ごとハチ毒を排除してしまおうとします。ところがこの正常な防御反応が暴走し、特に体に害を及ぼさない外の物質まで敵とみなし排除しようとするのがアレルギーと言えます。

2乾燥肌体質(DrySkin)

2006年、アトピー性皮膚炎の原因の一つとして表皮成分の「フィラグリンの異常」が報告されました。生まれつき表皮成分のフィラグリンが欠損して、皮膚表面が隙間だらけになって、異物が過剰に侵入し、免疫防御反応が暴走、アトピーが起こると考えられます。

3悪化因子(表皮に存在する細菌、ストレス・不眠・食べ物・腸内環境etc)

* 表皮に存在する細菌:皮膚表面には黄色ブドウ球菌が常におり、掻いたり、DrySkinで表皮のバリア機能が低下し場合、皮膚内に侵入し、感染症を引き起こし、アトピー性皮膚炎を悪化させます。
* (精神的)ストレス:ライオンに狙われたシマウマを考えると逃げるため、四本足に体の資源を集中し、とりあえず今使わない胃腸はお休みにします。だから緊張すると手に汗握り、口は渇きます。よってストレスが長く続くと、体のある部分が犠牲になります。大体の場合、ストレスは病気を悪くします。
* 不眠:徹夜して肌がカサカサになった経験がおありになると思いますが、眠れないとまず皮膚が犠牲になります。また漢方では午前1時以降起きていると体が乾くと戒め、
朝起き、夜寝る自然の生活を良いとしています。
* 食べ物:食物アレルギーではなく、漢方では甘い物は体の中に湿気(湿)を引くといい、これが過ぎると湿が皮膚に行って湿疹になると考えます。中でも甘くて冷たいアイスクリームは、お腹を冷やしてお腹の動きを弱め、湿がたまりやすくなり、甘い物脂肪とくっついて最悪の食べ物と言えます。
* 腸内環境:小腸にはリンパ節(免疫防御の基地)がたくさんあり、体全体の免疫を調整しています。腸内細菌が小腸の免疫に大きく関わるという報告が多々あり、色々な体に有益な乳酸菌をとることが免疫調整にいいといわれています。

時期別症状について

乳児期の症状は、湿疹と混同される場合もありますが、その炎症は頭部に始まり、次第に顔面に及び、そして体幹、手足に下降状に広がります。
幼児期-学童期には、関節の内側を中心に発症し、耳介の下部が裂けるような症状(耳切れ)が現れます。
思春期以後は、広範囲にわたり乾いた慢性湿疹の症状を呈し、眉毛の外側が薄くなるヘルトゲ兆候が見られることもあります。

発赤した皮膚をなぞると、しばらくしてなぞったあとが白くなる白色皮膚描記症という症状が出ることがあります。
乾燥して表面が白い粉を吹いたようになり、強い痒みを伴う赤い湿疹、結節などができ、激しい痒みを伴うもので、痒疹を伴うこともあり、湿潤した局面から組織液が浸出する場合もあります。

慢性化すると、鳥肌だったようにザラザラしたものができ、皮膚が次第に厚くなっていきます。
しこりのあるイボ状の痒疹ができることがあり、この場合難治性で、イボになることもあります。
思春期以降は、手指に症状が表れ易くなり、爪元から第二関節あたりが特に酷く荒れやすいです。

児童期が湿潤型、思春期以降は乾燥型の皮膚炎を起こすのがアトピーの特徴です。
湿潤型は主に首周りや肘膝関節裏、乾燥型は頭皮、額、肩、内腿、内椀に発症し易いのが特徴で、乾燥型に切り替わるとき、湿潤型の症状は軽快する傾向があります。
思春期以降は、油脂分泌不足から頭皮に大量のフケが出るケースが多いです。

主な合併症

皮膚疾患

アトピー性皮膚炎体質の人は一般に皮膚が弱く、子供の頃におむつかぶれを起こしやすかったり、各種の化粧品、塗り薬、洗剤などによる接触性皮膚炎を起こしやすいことが知られています。
アレルギー反応が強い箇所を中心に、結節を伴う痒疹(結節性痒疹)を生じることがある。慢性化、難治化することもあります。
円形脱毛症の合併も知られています。

感染症

細菌に関しては、重度の湿疹病変から進入した黄色ブドウ球菌などによる伝染性膿痂疹(とびひ)をとくに幼児において多く合併することで知られている伝染性軟属腫(水いぼ)などのウイルスによる皮膚疾患に感染しやすく、アトピー性皮膚炎患者が単純ヘルペスを罹患すると重症化することが知られています。

眼科疾患

最近では白内障や網膜剥離を合併するケースが増えてきています。
網膜剥離に関しては、特に顔面の症状が酷い際の掻破、顔をたたいてかゆみを紛らわせる行動などの物理的な刺激の連続により発生すると考えられています。

白内障については原因は網膜剥離と同様、顔や瞼の痒みから強く擦ったり叩いたりするからではないか水晶体は発生学的に皮膚細胞と同じ分類に入るため、アトピー性皮膚炎と同様な病変が起こるのではないかといった説があります。

いずれにせよ、加齢に伴って発症する通常の老人性白内障とは異なる原因で発生すると考えられており、また水晶体が皮質からではなく核から濁ってゆく事が多いという症状のパターンの違いから、「アトピー性白内障」と呼ばれることもあります。

また、ステロイド内服の副作用として白内障があげられることから(※1)、原因としてステロイド外用剤の副作用が疑われましたが、外用剤との因果関係は不明であること(※2)、内服薬の副作用として発生する際は、白内障ではなく緑内障の発生率のほうが高いにもかかわらず、外用剤のみで治療されているアトピー性皮膚炎患者では緑内障が少ないという矛盾があることから、ステロイド外用剤は直接白内障とは関連がないとの結論に至っています。



<参考文献>
(※1)公益社団法人 日本医療機能評価機構 診療ガイドライン 第2部 一般療法 第6章 ステロイド副作用・眼科的副作用
(※2)第58回東京都皮膚科医会学術集会(H19/3/10) ステロイド外用剤の使い方 聖マリアンナ医科大学 相馬良直